目を覚ますとそこには見慣れぬ光景が広がっていた・・
どこかはわからないのに・・私はここがどこかわかってしまった。
窓から降り注ぐ月光に目を奪われる・・
やがて夜が明ければまた肌を焼くような太陽が照り付けるだろう・・
けっして住みよいわけでもないのに、またこの場所に帰りたくなってしまうほど郷愁を誘う場所・・
熱砂の王国シャナーサにもう一度帰れるとは思ってなかったのに・・
密偵としてルーガンに赴いたのが遠い昔のようだった
当時皇太子だったヴィンス殿下の協力者になり共に敵を討ち取ったはずだった。
でも不幸な出来事があって嫌というほど男の愚かさが身に染みてしまった私は変貌してしまったのだ。
ヴィンスと結婚して女王として君臨しながら多くの男達を弄んだが、それを良しとしなかった夫の裏切りにあってしまった。
まさに窮鼠猫を嚙むというやつだった。
そして生きたままガラスの棺に閉じ込められた私にヴィンスは告げた。
「この国に王は二人も必要ない。俺は生まれ持った己の権利を取り戻すまでだ。だからここでお別れだ・・シリーン、ああ・・そうだ。改宗していないお前との婚姻は無効だそうだ。悪く思うな・・命だけは助けてやるが二度とこの国に戻ろうと思わない方がいい・・首が繋がっていたいならな」
なんですって!?・・ああ・・なんてことなの・・
矜持をくじいたと思ったのは早計だったようだ。
恭順を示しながら私を出し抜く機会を伺っていたなんて・・
かつて隣国を武力で滅ぼした武勇で馳せた英雄であったと思い出した時にはすべてが遅かった。