嬉々として私にかしずいていたくせに!まさか裏切るなんて!
結局ヴィンスは私が重荷だったのだろう。平凡で従順な女を選んだ彼はあっさりと私と縁を切ることにしたらしい。
そうして私はあっけないほど簡単にルーガンを追放されてしまったのだった。
棺は小舟に乗せられ川へと流された・・船頭は無口な老人一人だけ・・
ガラスの棺に空気穴はあったけどもし小舟が沈めば私の命はない。
揺れる視界や閉塞感に朦朧としてしまって考えもうまくまとまらなかった・・
でも・・いいわ・・だってこんなに素敵な満月の晩だもの・・
何が待ち受けていようと今だけはこの静謐な夜を楽しみましょう・・・
やがて船は岸につき、私の棺を取り囲むように屈強な男達が棺を小舟から降ろしたかと思うと荷台に乗せられてしまった。
あの時のことを思い出しそうになったけど目をつぶりやりすごす。
ダメよ・・今あの出来事を思い返しては絶対にダメ・・
咄嗟に悲鳴は飲み込んだけれど抑えきれなかった涙が閉じた目から零れ落ち冷めた頬を雫が伝い落ちた。
国境を越えさらにそのまま運ばれていく・・
ああ・・まさか・・・
この道の先に進めばシャナーサへと至るだろう・・
容赦なく敵国の王族の首級をあげたヴィンスにしては温情をかけてくれたのかもしれない。それがせめてもの情というわけ・・?
ならば礼を言うべきかしら・・
もし命尽きるならばあの砂漠に抱かれた地でありたい
こうして私は微睡みながらこの場所に戻って来たのだった。