曖昧な心地よさにひたっていたがそうもいかなくなってしまったのは、彼女に男の気配があったからだ。

 

ベールを目深にかぶった使用人だったが、彼女を常に気にかけているようだった。

 

だがもちろん互いにそ知らぬふりを通しており私を欺こうとしているのは間違いなかったから、こちらから仕掛けることにした。

 

わざとあの男の前で彼女を抱き寄せた時のことだ・・彼女は人質同然だった。

 

殺気立つ男の気配に警戒しながら私は彼女を試すことにしたが、その目を覗き込んだ時後悔することになった。

 

蜂蜜色の美しい彼女の瞳には傷心が浮かんでいたからだ。

私の振る舞いに腹を立てた彼女は珍しく感情を露わにして抵抗を見せた。

 

あの男に見られるのがそんなに嫌か?

そう思えてならなかった。

だからことさら煽るように抱き寄せた私の腕に彼女は爪を立てた。

 

王の身体に危害を加えるなどあってはならない行為だが、不思議なほど腹はたたなかった。

 

もともと私が黒豹を愛玩していたこともありじゃれて怪我をすることもあったからかもしれない。

 

それに比べたら可愛いものだ。

だが彼女は真剣に私を拒んでいたし、加減をすべきだったようだ。

 

女に辱めを与えるほどゲスではない。

ましてやまだ婚約者の身だ。私も戯れが過ぎたようだ。