彼女はとても美しかったがどこか影があり傷ついた目をしていた。
この世界の理不尽さを知ってしまったのだろう・・
貧富の差が歴然とあるこの国で身寄りのない少女が生きていく術など限られていたからな。
だが当時の私はまだ若く希望を捨てきれなかったし、彼女もひと時の安らぎを求めていた。
せめて美しい光景を共に見たかったから私は彼女を砂漠に誘った。
今思えば無謀なことをしたものだが。かけがえのない思い出だ。
一枚しかない毛布にくるまり互いの体温を感じながらともに満天の星空を見た。
星などもちろん町中でも見えるが物騒なところではおちおち星など見ることもできはしない。皆日々の暮らしにあえぎうつむいた者達ばかりだ。
彼女は微笑んでいた。感動のあまり涙を流す姿はとても尊くて
あの美しい横顔はその後長く私の心に焼き付くものだった。
他でもない彼女に私という凡庸な男がいたことを覚えていて欲しくて名乗ったら
彼女は人懐っこい笑顔で「ルト」と名を呼んでくれた。
彼女の命を守れたことで私も救われた。心残りではあったが互いに迎えが来てしまい彼女とはそれっきりだった。
あの娘が無事成長できたならちょうど彼女くらいだろうか・?
透き通った素肌と蜂蜜色の瞳と白銀の髪の少女だった。
名は・・・シリーン・・ああ・・今でも覚えているさ
とても大切な名前だから。
私はあの娘を救えたのだろうか・・?
もっと他になにか力になれたのではないか・・?
後悔はつきなかったが、私は王として民を導かねばならなくなってしまった。
たった一人の少女が私の手からこぼれてしまったことはずっと抜けない棘のように私の心を苛むことになったが、少しでもこの国を良くすれば彼女のような悲しい娘達を救う道になるだろうと信じてきたのだ。