ほんの戯れでしかなかった。

 

夜ごと彼女が私を誘惑してそれをかわす・・

欲望を煽る女だったが私の心はやはり冷めたままだった。

 

あれは本当の彼女の姿ではないのだとどこかでそう感じたからだ。

 

私達は互いの心を隠しながらそれでも気づいたら共にいるようになっていた。

 

なぜかひどく彼女は馴染むからだろうか・・?

そんな女はこれまで私が知る限り一人だけだった。

女と呼ぶには早すぎたが・・私が唯一本当の名を教えた娘だった。

 

私は庶子だったが正当な世継ぎが早世してしまったため王位を継ぐことになってしまったのだ。

 

早世した皇太子には隠し子がいたらしいがその者の行方は今もってわからない。

 

今でこそ安定した治世ではあるが混迷を極めた時代もあったということだ。

 

ちょうど私が21の頃だったが、それまでは街で義賊の真似事などをして日々の鬱憤を晴らしていた。

 

この国が抱える闇に息が詰まりそうだった。

なんとかしなければと焦燥だけが募りながらも私にできることなど限られていた。

 

母も亡くなり喪失を抱えたまま生きる気力を失いかけていた矢先私は名を捨てて王になることを余儀なくされたのだ。

 

それはチャンスでもあったが、大きな力を前に私は臆していた・・

そんな時のことだ。その少女に出会ったのは・・・

 

母と同じ名前の少女だった・・・まさに天啓に思えた出来事だ。

 

川で溺れた彼女を助けたのはまさに偶然だったが、あれが事故だったのかそれとも世を儚んでのことなのかはわからない。