けっしてキスはくれなかったけど素肌に触れる貴方の唇はとても熱くて・・

 

不感症だって思ってたのに・・こんなにも私は・・・貴方の指に乱されてしまう。

 

無様に翻弄されて洩れそうになる悲鳴を押し殺すことしかできなかった。

 

素肌に注がれるジェミルの視線が痛くて、やめてって訴えたけど貴方は聞いてくださらなかった。

 

「なんだ・・使用人のことなど気にするな・・誘ったのはお前だろう?」

 

でも・・・でも・・

 

気づいていてわざと見せつけるように私を抱く意地悪なライザール様に抗議したくて思わず腕に爪を立ててしまった。

 

ライザール様は動じなかったけれど我に返った私は動揺してしまった。

 

王の身体に傷をつけてしまうなんて失態だった。

 

処刑を覚悟したのになぜかライザール様は苦笑されて「私も戯れが過ぎたようだ。なに、気にするな・・この程度可愛いものさ」と言われただけだった。

 

許してくださるの?

 

王の命を狙っていたのにいざ彼が傷ついたら動揺してしまうなんて・・

 

私はそれほどまでに貴方のことを・・?

 

ターゲットと寝るなんてたいしたことじゃなかったはずなのに・・

ライザール様との逢瀬をジェミルに見とがめられた私は動揺していた。

 

ジェミルにわざと私との行為を見せつけようとするなんて・・

 

私達の関係を疑っているから揺さぶりをかけたかったのだとしても

嫉妬しているようにしか見えなくて戸惑ってしまう。

そんなはずないのに・・

 

でも私自身、欲望を伴わない関係でいたかったジェミルに見られるのは気まずかったし、ライザール様の仕打ちに傷ついてしまった。

 

私の抵抗を受け興ざめしたのかライザール様は欲望を散らしたけど見逃すまいと私の反応を窺っているようだった。

 

まだ快感の名残が素肌に残っていたけど、誘惑が失敗してしまった以上引き際が肝心だった。

 

でもその前に・・・

 

怪我の程度を確かめたかったし手当を申し出たらライザール様は訝しむような眼差しでみたけれど触れることを許してくださった。

 

遠慮なくひっかいてしまったから爪痕は生々しく残ってしまうだろう。

 

けれど私の注意を引いたのはもっと大きくえぐれた傷跡だった。

左上腕に残された獣の爪痕を見た瞬間、私の脳裏にルトの笑顔が浮かんだ。

 

ああ・・貴方はまさか・・・

 

初めて見た瞬間デジャヴを覚えて、ことあるごとに私の胸をざわつかせたのも彼が私が探し求めていた義賊のルトだったからだったなんて・・

 

年頃や風貌も違和感はない・・ではやはり・・

 

ああ・・私ったらなんてことを・・・

 

いつもそばで支えてくれたジェミルとは別に見返りを求めない優しさを教えてくれたルトもずっと大事な心の支えだったのに・・

 

そんな人を誘惑しようとしていたなんて・・

二度と出会えないと思っていた存在と再会できたことは私の心を大きく揺さぶるものだった。

 

せめて感謝を伝えたくて包帯を貴方に教わった方法で結ぶことしかできなかった。

 

貴方に恩を受けたのに・・仇を成した私を許して欲しい・・

 

私にはもうライザール王の命を奪うことなどできないと

悟るには十分だった。