※ライザール視点です
一目見た瞬間精彩を欠いた気持ちが一気に華やいだ心地だった。
ああ・・・彼女だ・・相変わらず美しい・・いい女だ。
柔らかな胸も敏感な素肌もすべてこの腕に抱いたが残念なことに唇だけは知らない。
だからどうか教えて欲しい・・そう願いながら彼女を見つめると彼女もまた私を見ていた。
誘惑するように視線を寄越しながら艶やかな紅をひいた唇で微笑む彼女を前にした時もはやどのような抵抗もできないと悟った。
私はとっくにこの女を愛していた。今となっては潔く認めよう。
彼女を抱いた夜から幾夜過ぎてもけっして忘れ去ることなどできなかった。
キスを交わせばもはや手放すことなどできはしない。
だからどうか再会をやり直すチャンスが欲しい・・
だが彼女への恋情に苦しんでいたのはどうやら私だけではなかったようだ。
それは場が暗転した時のことだ。
僅かに出遅れた一瞬を逃すことなく先に動いた者がいた。
ジェミルだった。
奴は暗殺を生業としてきたせいか闇をものともせずに微かな残り香や気配を察知して彼女にまっさきにたどり着いたらしい。
私も若い頃は義賊の真似事をしていたこともありこう見えても荒事は得意だし夜目も効くと自負があるから周囲の状況をいち早く把握することができていた。
真っ先に賓客の安否を確保するのは主催者としての義務だからな。