※ライザール視点です

だが奴は密偵ではなく暗殺者だった。絶対に口を割ることはないが自害をする気配もない。

 

残される彼女を案じているのか・・そうなると話は別だ。

ならば弱い方を責めるのはセオリーだろう?

 

あの男は彼女を慕っているようだが、彼女はどうかな?

 

どうだ・・お前はあの男のためならばどこまでできる?

それはふとした好奇心だったが、案の定ゆさぶりをかける私に

彼女は取引をもちかけた。

 

「あの子の命を助けてくれるならなんでもする」・・彼女はそう言った。

 

この期におよんでこの私と駆け引きをするとはなかなか気丈でしたたかな女だ。

 

だがまずは己の保身より仲間の身を案じるか・・良い心がけだ。

 

密偵としては随分甘いことだが。

 

その心意気は買おう。だが健気だが愚かだ。

・・そうまでしてあの男を守りたいと?

 

なんでも・・・ね。ならばその身を差し出すがいい。

せいぜい楽しむとしよう。

 

高まる欲望を感じながらも機嫌は最悪だった。

私の思い通りになったのになぜか面白くなかった。

いや彼女ならきっとそう言うと確信があったから私から仕向けたことだったのに・・

 

その瞬間悟った・・愚かにも私は嫉妬していたらしい。

あの男の為に身を投げ出した彼女を許せないと思った。