それはシャナーサのヒラ―ル宮でのことだった。

ライザール王主催による知己となった方々を招待しての私的な会合が開かれたパーティ会場が突如闇に包まれた時、私もちょうどその場に居合わせていた。

 

もちろん王にご招待いただいたの。彼とは浅からぬ仲だわ。

 

月明かりもない真っ暗闇の中慎重に周囲の状況を窺っていたら誰かに背後から抱き寄せられたかと思うと驚く間もなく唇に何かが触れた。

 

それは確かに唇の感触だった。

どうやら闇に乗じた不埒者に唇を奪われてしまったみたい。

 

官能を呼び覚ますような香水の香り・・

温かな腕に包まれたまま、私達はしばしの間密な時間を共有したけど・・

 

私だって子供じゃないし今更キスくらいで動じたりしないけど・・

それでもキス盗人はいただけないわ・・

 

いったい誰の仕業かしら?

 

だけどよそ事を考える私の思考を中断させるくらいに熱のこもった口づけをくれた「彼」はやがて満足したのかかすかに吐息をもらすように笑った気配がしたかと思うと明かりがついた次の瞬間には忽然と姿を消してしまった。

 

いったい誰の仕業かしら?

 

燐帝国のご兄弟・・?それともルーガンの王太子殿下?

皆さまお酒を召し上がったのか頬が上気していて不埒な秘め事の名残なのかわからない。

 

まさか・・ジェミル?なわけないわね。あの子にそんな度胸あるはずないもの。

 

それにごめんなさい、年下は範疇外よ。

 

私の視線に気づいたのかじろりと睨み返すジェミルに笑顔を返すと舌打ちして目をそらされてしまったわ。

 

相変わらず嫌われているみたい・・しょうがないわね。ショボーン