ふん、私の知らないところでシリーンに接触を図るとはな。

相変わらず密偵にスカウトしたいと考えているのだろうか?

それともやはり女として彼女に惹かれているのか。

 

すると訝しむ私の視線から察したのか若干慌てたようにライザが付け加えた。

 

「誤解なきように申し上げますがシリーン様が今宵はぜひペアルックをしたいとのことでしたので・・王も満更でもないのではないかと」

 

ペアルックだと・・?

 

なるほど、それはなかなか興味深いが・・

 

「ほう?それではさっそく着てみるとするか・・なかなか凝った衣装のようだが」

 

着脱しやすい工夫が施された仕様ではあったが服としても申し分ない仕立てだった。いつもローブ姿の私だがこの服も着こなせるといいが・・

 

ライザはまだ何か隠しているようではあったがとりあえず埒が明かないのであとはシリーンに尋ねてみることにしよう。

秘めた話ならば美女の口から聞きたいものだ。

 

なににせよシリーンに会うのが楽しみでならない。

 

満月

 

夜になり私は指定された衣装に着替えると馬車ではなく馬でカマルへと向かった。

 

馬

 

ライザは仮面をつけ護衛として随従していた。

奴は私の密偵だから顔は晒せないからだ。