会場のカマルのサロンはすでに混みあっておりなかなか盛況のようだが
・・さてシリーンはどこだろうか?
今宵の彼女の装いはわからないがあれだけ注目を浴びる彼女だけにすぐに見つかるだろう。
「見よ、王がいらっしゃったぞ。なんとも珍しいこともあるようだ。
ご挨拶に伺うべきだろうか・・」
「あら無粋はおやめになったら?王がここにいらっしゃるのはお目当てがあるからですわよ・・ほら例の・・」
しかし目立つのは私も同様だった。そこかしこから密やかなさざめきが上がり私の存在に皆が注目しているのだと知らしめるには十分だった。
だが誰も声をかけてくることもなく意味深な目配せをしあっている。
シリーンの存在があるからだろう。彼女との関係はすでに周知の事実だった。
私と出会う前こそ火遊びをしていた彼女だったが、今は私だけの特別な女だから。
今宵カマルに私が訪れた理由を皆も察しているのか、逢瀬の邪魔をして私の不興をかってまで媚びる無粋な連中は皆無だった。
いやむしろ妻ではない女の同伴者がいるのは奴らの方だ。妻の実家に気兼ねしつつも女遊びはやめられない厚顔無恥な連中と違い生憎と私は独身だし憚る相手もいない身だ。
せいぜい楽しませてもらうさ。