かつて店主様は生き残った私に「誇っていい」と言った

そして私をあの塔に閉じ込め「愛情」を注いだ。

 

だけど・・だけどそれは全部嘘だった。

私の自我を奪い彼に都合の良い人形に仕立てられただけだった。

 

そんな私がルトに抱かれて彼の女になってこの街に自らの意志で来ることにした。

 

私を構築していた概念は崩れ今新たな「世界」を構築しようとしている。

 

確かにルトは私の髪を盗んだ悪い人で、私を利用した・・

だけど・・だけど私はルトを愛していた。彼の力になりたい・・

 

おそらくこの場所に留まれば二度と塔には戻れないだろう。

 

唯一私に安息をくれた場所だった。

けれどもはや・・今の私には閉塞感しか与えない場所だ。

だからかまわない。

 

やがて押し寄せる群衆を背後に置き去るようにラクダは駆け開けた場所に駆け込んだあとゆっくりと失速して止まった。

 

淡い月光に照らし出されたその場所・・そこには巨大な建造物が私達を待ち構えていた。

 

ルトはあえてこの場所に逃げ込むことにしたようだった。

 

夜とはいえ一際深い闇に沈んだ場所・・周囲に人気はなく静まり返っていた。

 

遠くから興奮した群衆の声が聞こえたけれど追ってくる様子はなかった。

 

この場所を恐れているのね・・

そこは忘れ去られた場所のようだった。