どれだけ歩いただろうか周囲は明らかに身分の高い者達が住まうと思しき住居が立ち並んでいた。

 

貴族など私には意味をなさなかったが、いわゆるこの街が決めたルールらしいからここは様子を見た方が無難だろうか?

 

それにしてもなぜ鳥はこの場所に導いたのかしら?

そう思った矢先の出来事だった。

 

上空から黒い影が飛び降りたと思ったら私の腕を掴むと一目散に駆け抜けた。

 

ええ?もしかしてルト・・なの?

 

暗くてもそれは間違えようのないことだった。

どうやらなにかに追われているらしい。背後から不穏な気配がした。

 

だから密かにっ髪を使い追撃者を妨害する。

いくら私の髪が金色に光り輝いていたとしても今宵は満月・・細い髪の毛が見えるはずないわね。

 

 

やがて逃げ切れたのかルトは歩く速度を緩めるとそのまま立ち止まらずに宿屋に身を滑り込ませた。

 

わけありな者達が集う宿屋のようだったが他の客に遭遇しないですむならその方がよかった。

 

宿帳に記載を求められた私はルトの見様見真似で名前を記す。

 

宿屋の主人は何も言わなかったが、ルトは驚いたようだった。

 

何か‥間違えた?

 

塔を出たのも初めてだし名前を記すのも初めてだったから・・

不安が募ってしまう。

 

ルトは私の手からペンを奪うと名前を消し去り別の名を書いた。

 

シリーン・・?

 

不思議に思いながらも問える雰囲気でもなくて部屋に入るまで無言を貫く様子のルトに従うしかなかった。