まさかルトが義賊だったなんて・・
昔一緒だった頃は気づかなかったけど、暗殺者に目の前で母を奪われ孤児になってしまった後、盗賊にさらわれ砂漠で砂嵐に会い遭難していた私に救いの手を差し伸べてくれたのはルトだけだった。
今にして思えば彼は当時から義賊として悪しきをくじくために一人戦っていたのだろう。相棒はカルウーという黒豹だけ。砂に埋まっていた私をカルウーが見つけてくれた。
でも考えてみれば彼も随分孤独だったのかもしれないわ。
砂漠の洞窟に隠れ住み人知れず世直しをする人生を送れるなんて・・
保護された当時私は言葉を発することもできなくてずっとルトにしがみついていた。
だからかルトは救出した後もずっと私を傍に置いてくれた。
そうして恐怖でしゃべることもできず感情を置き去ってしまった私を忍耐強く見守ってくれたから、心を閉ざしていた私にも「ルトが安全な大人」だって認識できたのだ。
恐怖が薄れた分感情が戻ってきてしまい、時折ふいにとめどなく流れる涙を持て余しながらただ無言で泣く私をルトは黙ってあやしてくれた。
私の小さな世界が壊れてしまって、唯一の庇護者だった母を失って泣いてばかりで悲しみにくれていたけどルトは黙って傍にいてくれた。
「どうしてそんなに優しくしてくれるの?」
――見返りはなに?
それは私の中に芽生えたささやかな疑問だった。
ここまで熱心な他人に会ったことがなかったから。私の面倒を見る大人たちはお金が大好きな人達ばっかりだったから。
それに母や私に注がれる彼らの眼ったら。女であることが苦痛だった時もあったし「無償の奉仕」という発想自体なかった。