何度も口づけて抱きしめ合う・・

 

互いの体温と鼓動を感じながらじっくり愛し合った後、彼の胸に頬を寄せ腕に抱かれながら私はルトの声を聞いていた。

 

「こんな感覚は本当に久しぶりだ。魔神とは感情とは無縁だったのだな。女を抱く喜びも忘れていたとは・・・愛するそなただから格別だ。人に戻れるなんて思ってもみなかった。

 

魔神になったことを後悔したことはないが、万能だと思ったのも初めのうちだった。私は喜怒哀楽も曖昧になり、ただひたすらライザの願いを叶えこの国を少しでも良くするために日夜身を粉にしてきた。

 

そんな毎日に違和感も覚えなくなったが、ただ一人・・そなたのことだけは忘れることができなかった。その想いだけが辛うじて私を人たらしめていたといっていい。

 

愛とはなにかもわからぬ魔神が・・追憶の彼方の愛を求めていたのだ」

 

そうだったのね・・人でなくなる苦痛はいかばかりだったろう・・その苦痛も忘れてしまうなんて・・取り戻せたからこそ、己が喪失していたことに気づくなんて・・

 

全ては私を助けるためにルトが見返りを求めずに払ってくれた代償だった。

 

ごめんなさい・・そしてありがとう‥ルト

 

私の髪をルトが撫でてくれる。ああ・・昔もそうやって私をあやしてくれたわね。

 

「私もねメモリーズパラサイトだったの。ずっとね・・貴方のことが忘れられなかった」

 

本当に不思議だわ。同じ世界に生を受けてそして遥か時空の彼方へと離れ離れになったのに・・私達の絆は断ち切られることなかったなんて。

 

「ならば私と一緒だな。そなたは昔も今も私にとって唯一のかけがえのない女だ。戻ってくれて嬉しいぞシリーン。・・・イイ女になったな」

 

誘惑するようなルトの表情豊かな顔には喜びが満ち溢れていた。

 

「貴方もいいオトコになったわ・・ねえ、聞いていい?ルト・・あの町で噂のライラ・ヌールって貴方のことなんでしょう?」

 

思い切って尋ねたてみたら一拍の間の後「ああ」と彼はこたえてくれた。

 

ならばレイラ様の出奔を手引きしたのも貴方なのね・・求めても無理強いはしない彼だ。ましてや拒む女に無体はしないだろう。

それは主の命には逆らえないルトのささやかな抵抗だった。

 

それにしてもまさか現役の王が義賊の顔を持つなんて誰も思わないでしょうね。

 

いかに法があったとしてもこのシャナーサのものは全て王のものだから王の代行者として彼が富を分配したからといっても誰も罰することなどできない。