そして時間は僅かに遡る・・・
私が目を覚ますと誰かが私を覗き込んでいた。
―――誰!?
ライザール様ではないことを瞬時に察して慌てて身を起こすと、わずかにふらついてしまった。
「気分が優れぬならば無理をしなくてよい・・」
よかった服は身に着けてたみたい。
声は穏やかで悪意は感じられないけど、見知らぬ男に素肌を晒すことは躊躇われた。
だけど私の心を占めたのは別のことだった。
だいぶ気分は良くなっていたが、添い寝してくださっていたライザール様の姿がないことに不安が募ってしまう。
――また私を置いてどこかへ行ってしまったの?
彼には使命があったのだとしても孤独のまま取り残されたことは
トラウマになっていた。
時空の渦に飲み込まれてしまい二度と会えなくなる可能性だってある。
そんな状況で見知らぬ人物と二人きりなんて・・
「ライザール様はどこ?」
答えてくれるかはわからなかったし、彼とどのような関係かはわからないことがもどかしかったけど、寝室まで立ち入るならば親しい関係のはず・・
私は問いかけながら男を観察した。
白銀の髪はショートでシャギーの入った毛先だけを長く伸ばして括っていた。細面で血の気の引いたような白い素肌の右頬には皮膚疾患なのだろう蛇のような鱗が浮かんでいた。吊り上がった双眸は目じりがたれ赤と金の二色の瞳はどこまでも澄んでいて・・笑みをたたえた唇は薄く一見すると酷薄そうな人物だったが、表情に棘はなく敵意も悪意も感じ取れなかった。
30代前半くらいの壮年の細身の男性だった。
ドクン・・・
なんだか不思議な気持ちだわ・・なぜ?
私の困惑を察したのか眼前の人物は穏やかな笑顔で言った。
「ああ、驚かせてしまったようだ。すまない、シリーン・・会うのは初めてだが私がこの国の真の王であり、そしてお前の父親だ。幼名は・・という。そなたはそなたの母によく似ている。一目見てわかった、会えて嬉しいぞ・・よくぞ戻った」
え・・・?
私にとって父親とは、ロサンヨークで暮らした義父のことだった。