彼を促して向かい合った私は思いのたけを込めて告げた。
「ねえ、ライザール様・・私が貴方の傍にいてもいいですか?」
本当は離さないで欲しかった。
どうか私を受け入れて・・
だけど望むことしかできない。全ては彼次第だった。
そしたらライザール様は微笑まれて私の頬に手を添えたかと思うと、そっと唇が重なった。
それは私の、私達の初めてのキスだった。
ああ・・キスがこんなに甘美だったなんて・・知らなかった。
だってまだすべての謎が解けたわけじゃないのに、私は彼のキスを受け入れて心を弾ませている・・
そしてもっと求めて欲しいと思っている・・
ならば私は心に従うわ・・
だけどここから先はお預けとでもいうかのように彼は猛りを抑えて身を引いた。
婚姻はまだだったからライザール様なりのけじめだと思ったけど、改めて彼を見上げたら動揺しているようだった。
!
あまりにもキスに夢中になっていたから気づかなかった。
私の頬に添えられていた手を髪に差し込むように顎から首筋を撫でて痣を塗り隠していた白粉を親指でこすり落としていたなんて・・
咄嗟に恥じ入るように首筋に手を押し当てて痣を隠す。
だってそれは私の心を現したかのように赤いハートが浮き上がっていたから・・
子供の頃よりもいっそうに大きくて色鮮やかに・・
彼もいずれかの時点で確信を持ったのかもしれない。
だって私達はずっと互いを探していたのだから・・
体温の上昇と共に首筋に浮かび上がったハート形の痣をライザール様は見ていた。
ああ、ついに知られてしまったけど・・でも・・
彼になら知られてもかまわなかった。それにやっぱり彼の反応を見て期待もあったの・・