昨夜は気まぐれで関心を示してくださったけれど、ライザール様がまた受け入れてくださるかはわからない・・・

 

アリ様のお話しでは政治的な事情が婚約の背景にあるらしい・・

 

つまり政略結婚ね・・

 

もし私がレイラ様でなかったとしても、体面を重んじるアリ家への追及を王は避けられるに違いない。

 

それを見越しての采配だった。

 

本当に茶番でしかなかったけれど、アリ家の支援を受けたい王と、王の傍にいきたい私と、王に恩を売りたいアリ様の利害は見事に一致していたのだ。

 

こうして私は偽りの婚約者としてライザール王に嫁ぐためにヒラ―ル宮に赴いた。

 

本当に不思議・・なんの因果なのかしら?

 

侍女や家令が付き従い、当主のアリ様が出迎えた王と宰相に私を引き渡し婚約の儀式は滞りなく終わった。

 

事前に聞いたお話しでは王には他にご家族はなく愛妾の類ももたれない・・

 

友もおらず・・孤独な王だった。

 

私はなるべく発覚が遅れるようにアリ様の命で顔をベールで覆っていたけれどそれにも関わらず王の視線を常に感じて冷やりとしていた。

 

それに気がかりはそれだけではなかった。

さすがに婚約の儀にペットの同伴は禁じられてしまい、やむなく侍女に預けたのだがカルウーは侍女の腕から抜け出して駆けて行ってしまったのだ。

 

迷子になったら大変だわ・・

いかに首輪をしていたとしても、誰かが連れていってしまうかもしれない・・

 

気もそぞろに顔合わせも兼ねた婚約の儀を終えた後、回廊を通り婚約者の私のために用意された部屋で待つように言われた。

 

侍女達が下がり一人きりになった後、私はカルウーを探すことにした。

 

カルル・・

 

どこからともなく鳴き声が聞こえる・・

 

カルウー?いるの?

 

この部屋にはベランダがあるし、外階段へと繋がる回廊にでれば中庭にもいけるようだった。

 

窓から見下ろすとカルウーと思しき黒猫がとことこと中庭を歩いているのが見えた。

 

いたわ!追いかけなきゃ!

 

中庭へと降りた後、カルウーを探しながら周囲を窺っていた時のことだった。

 

カルルル・・

 

いた!

 

鳴き声のする方にカルウーを見つけた私が駆け寄ろうとした直後、カルウーを抱き上げる腕が伸びて来たのはほぼ同時だった。