ちらりと背後を窺うとアリ家の家令が私を見失わぬように監視していた。
カルルル・・
ちょんと私の腕に手をかけ愛らしく鳴く猫を見てたら思わず和んでしまう。
ふふ・・可愛い
お腹が空いたのかしら?どうしよう・・この猫ちゃんの餌を手に入れないと・・
町中でもちらほらと猫はみかけるし、猫の餌も手に入れやすいかも・・
バザールだけに猫は何と言ってもネズミをとってくれるから重宝されているようだ。
もちろん現代みたいな栄養バランスのとれたキャットフードとはいかないけど・・
猫ちゃんが食べれそうなものはあるかしら?
屋台をぶらつきながらスパイスに付け込む前のささみ肉をわけてもらい猫ちゃんにあげてみた。
すると喉を鳴らしてペロリと肉を平らげる。
それを見ていたら心の琴線に何かが触れた気がした・・
いつかどこかでこんな風に黒い猫と戯れたような・・
でもあれは猫じゃなくて・・そうもっと大きな黒豹だった。
なんて名前だったかしら・・・?
――確か鳴き声からついた名前だったはず・・
そうだわ!
「カルウー」
そう呼びかけた途端猫の耳がピンと立ちこちらをじっと真円の双眸で見つめた。
「気に入った?お前の名はカルウーよ。私はシリーン、よろしくね、カルウー」
そう言ったら黒猫は嬉しそうにカルル・・と鳴いた。
そうして和んでいたのに、背後で咳払いが聞こえた。
どうやらしびれをきらしたらしい。せっかちなんだから・・
とはいえ私の覚悟はもう決まっていた。
ただし条件はつけないとね。