身寄りがないから施設に送られた私を引き取ってくれたのが現在の養父母だった。子供がいるのに養女を貰うなんて不思議だったけどここロサンヨークの上流階級社会ではままあることらしい。

 

いわゆるノブレス・オブリージュというやつだ。

 

もちろん初めは言葉の壁もあったけど、あらゆる教育を受けさせてもらえたし、姉のレイラも年の離れた妹の私を可愛がってくれたから・・

 

月日と共に私の記憶は徐々に薄れていった。

だから少しでも忘れないうちに私は思いのたけを日記を書き留めた。それは私の秘密の日記だった。

 

シャナーサで暮らした日々は夢だったんじゃないかって思えるくらい幸せだったはずなのに、どこか満たされない自分がいたのだ。

 

そんなある日、たまたま立ち寄った映画館で封切られたばかりの映画「シャナーサの休日」を見てシャナーサの光景に心を奪われてしまった。

 

スクリーンの中で笑顔を振りまくラウルさんとヒロインが夕日を背にキスをする直前、逆光で振り向いたラウルさんの顔が「彼」と重なった。

 

ああ・・いつか私もこんな夕日を砂漠で「彼」と一緒に見たわ

 

貴方は・・誰?

 

そして私にはけっして忘れることができなかった方がいたことを思い出してからは追憶に浸る日々だった。

 

手がかりを求めて12歳の頃から暮らす部屋を整理して居た時、

子供の頃の日記を見つけた。

 

拙い字で解読は大変だったけどシャナーサでの思い出が綴られていた。

 

まるで夢の中の出来事のようだった。