「私は・・・シリーンと申します」
あえて本名を名乗った途端ライザール様の目つきが鋭くなった。
「ふん・・・お前もか。いったいこの国には何人のシリーンがいるんだろうな。だが生憎だが本物は一つだけだ。私はまがい物に用はない。さあ、お前の望みを言うがいい・・・私に何を望む?
富か・・?名誉か・・?」
おかしなことを聞くのね・・私は確かにシリーンだしこの世にいる同名の女達もそれぞれ本物だろう。それに店主もありふれた名前だと言ってたじゃない。
でも・・そうか。王の話にあわせて嘘をついた偽りのシリーンもいたんだったわね。
それは人間不信になりそうだわ。
「私は何も望みません。だって私は確かにシリーンですもの。偽物なんかじゃない。貴方が求める方と違えど偽物だなんて言われたくありません」
ああ!生粋のロンサヨーカーってわけでもないのに・・・
私ったら身分差が公然とある世界で王に楯突くなんて・・
それに私の願いは自分の力で叶えなければ意味のないものだった。
恐る恐る王の様子を窺うと、王はふっと不敵に笑むと途端に上機嫌になった。
「気に入ったぞ『シリーン』それがお前の本名であるならば許す。
今宵は私の閨に侍るがいい」
!!ええ!ちょっとだからどうしてそうなるのよ!?
「あの・・困ります。だって初対面じゃないですかっ・・それに・・私会ったばかりの貴方とそんなこと・・・無理です。私芸は売っても身は売りませんから!」
対等じゃない関係なのについ口をついて出てしまった本音だった。
私の言葉がよほど予想外だったのかライザール様は唖然とした顔だったが、怒るでもなくさも愉快そうだ。
「ほう?たいがいの女は誘えば私に身を任せるがな・・・もちろん私だって好みというものがあるから全ての女を抱くことなどありえないが・・ますます気に入ったぞ。骨のある女は久しぶりだ・・それに初対面ではないんだが・・」
ぼそりと呟いた最後の方は聞こえなかったけれど・・