「ああ、こちらでしたか店主様。あの・・・王が彼女を「御所望」です」
御所望!?それってまさか・・・![]()
嫌な予感のまま店主の顔を窺うと、店主がニコニコ顔で頷いた。
「まあ一晩だけだから・・仮にも王だけに断われないだろう?お前たち!彼女に湯あみをさせて身支度を整えなさい」
ええ!?まだ契約したわけじゃないのに・・
これでもロサンヨーカーだもの断固抗議しようかしら?
・・・でも待って!もし本当にこの場所に導かれたなら流れに身を任せてみるべき?例の噂の件を確かめる機会が巡ってきたのだと思えば・・
とはいえ頭痛いわね・・・ラウルさんをかわせたと思ったら自称義賊さんに押し倒されるし今度は王だなんて・・
こんな展開が待つとは思わなかったけど断るタイミングを失った私は使用人と思しき女性に促されたまま湯あみをして、身支度を整えた後王の待つ部屋へと通されたのだった。
天蓋付きのベッドに腰掛け垂れ下がる薄絹越しに寛いだ様子の王を前に私は店主様のアドバイスを思い返す。
「ああ・・そうだ僕から一つだけアドバイスをあげよう。君は僕の窮地を救ってくれた恩人だからね。・・もし王に名を聞かれても本名を名のらない方がいい。王の気分しだいだけど大抵上手くいくはずだ。王が君の踊りに感銘を受けたなら無下にはなさらないだろうさ。王は舞妖妃とは面識ないから君さえうまく立ち回れば大丈夫だ。もし失敗したら僕も君も首が飛ぶだけだ。だけど結局はどう応えるかはすべて「君の気持ち次第」だよ」
指で首を切る仕草にゾッとしてしまう。だがここは自力で切り抜けるしかなさそうだった。
やはり王がシリーンを探しているのは本当なのかも・・問題は理由の方だった。