街にたどり着きさえすればなんとか自力で道を切り開けると思ったのはやはり幻想だったのかもしれない。

 

この場所に導かれた以上謎を紐解く労は厭わないけど、だからといって何者にもなれないまま一生をだくだくと過ごすなんて嫌だった。

 

まずは私の思い出の「彼」を見つけること。全てはそれからだった。

でなければ安定した元の世界を失った甲斐がない。

 

ロサンヨークでずっと暮らしていたけど私は両親と血の繋がりはないし、養女だった。今日まで裕福な家で何不自由なく暮らせたのは優しい義姉と養父母のおかげだった。

 

そんな彼らを残し私は遥か数百年も昔に来てしまったのだろうか?

 

なぜ・・なんて考えてもわからないけど予感はあった。

 

・・・貴方はどこにいるの?

 

名前すら思い出せないなんて歯がゆいけれど・・

あれが夢でないなら可能性はあった。

 

諦めないわ・・絶対に貴方を見つけ出すから待っていて・・

 

そうこうしているうちに日は暮れて・・

 

宿の近くまで戻って来た時だった。

慌ただしい衛兵の姿に緊張が走る。

 

嫌な予感がしてひそかに通りから宿を窺うと、案の定宿の主人が衛兵の尋問を受けているところだった。

 

もしかすると分不相応な金貨を持っていたから怪しまれて通報されてしまったのかもしれない。

 

幸いベールで顔を隠していたから人相は知られていないけど用心に越したことはなかった。

 

それにあれが本物の衛兵とは限らないもの・・

 

なんにせよもう宿には戻らない方が賢明だわ。

 

そのままその場所を離れて夜になるのを待つしかなかった。