※ライザール視点です
翌早朝、私は彼女を街まで送り届けた。門に詰める衛士を黙らせ開門させたが、正体を明かさぬ以上、王宮まで連れ帰るわけにもいくまい。
それに今は微妙な時期だった。
カルゥーを護衛につけたとはいえ、あてがない年頃の娘を物騒な街に置き去るわけにもいかず幾ばくかの金と食料を手渡した後、なにかあれば王宮を訪ねるように言い含めた。騙され娼館に売り飛ばされないとも限らないだろう?
私はハーレムを持たないが、部屋ならいくらでも余ってる。
私を恐れない彼女なら傍に置いてもいい・・そう思ったからだが、彼女は一つ頷くと礼を述べた。
相変わらず礼儀正しい娘だ。いや・・今のは私がかわされたのか。
様子を窺っていたらほっそりとした中指にしていた小さな宝石が
ついた指輪を引き抜くとこちらに差し出した。
この私に女物の指輪を寄越すとは・・やはり変わった娘だ。
サイズを変えれば身に着けることは可能だが・・
「それ、お礼の代わりです。私がデザインしたの・・貴方がくださった金貨に見合うかはわかりませんけど受け取ってください。宝石も本物ですから。よかったら奥様にどうぞ・・」
どうやら妻帯者だと思われていたらしい。我が国では一夫多妻が一般的ではあるが、生憎と私は一夫一婦制を推奨している立場だった。
私が王になったのは女と遊ぶためではないし、女のご機嫌伺いに明け暮れる気もない。
それに後宮に女を詰め込めば必ず気がよどみ悲劇がもたらされるのは明らかだった。