やがてラクダに騎乗した人物と対峙することになったのだが、ベールを目深にかぶった男だった。砂漠の民だろうか?言葉は通じる?
そんなことを思いながらも一瞬何かを思い出しそうになりそうなほどデジャブを感じた。
「まさかこんなところでお前のような若い娘に会うとは・・連れはいないようだが私の助けは必要か?」
低く落ち着いた声だった。物腰や雰囲気からさっするに若いけど青年というより壮年・・かしら?いずれにせよ30歳前後ね。
のどがカラカラで声が出なかったからこくこくと頷くと察したのか水が入った革袋を投げて渡してくれた。
とても喉が渇いていたけどこれは彼の命綱でもあるから私は遠慮がちに飲むと水筒を返した。
「遠慮せずともよいが感心なことだ。この先にオアシスがある
・・共に来るがいい」
促すように差しだされたがっしりとした褐色の彼の手を取ると力強い腕によりラクダの上に引き上げられた。
思った以上の高さだったが慌てるだけの気力もなく、背後から私を抱きかかえたまま手綱を繰る彼の胸にもたれかかった。馬には乗れるもの。郊外の別荘には私専用の馬がいたから・・
途端に背に固い宝石の感触が当たり少し痛い。でもたぶん私の体重で押されて彼の方が痛いかも・・だからそっと離れる。
「とばすから舌を噛むなよ・・・はあっ」
掛け声と共に男は見事な手綱さばきでラクダを追い立てる。
馬とはまた違う振動に振り落とされまいと必死で私はラクダにしがみついていた。