やることが決まり少しだけ冷静さを取り戻せた時のことだ。片手の中に握り締めていた紙片に今更ながら気づいた。

 

それは散らばった日記の一部だった。

彼のことを思い出す手がかりが欲しくて直前まで手にしていたから一緒に飛ばされたようだ。

 

ざっと目を通したが肝心のところは擦れており役立ちそうな情報はない。

 

それはそうだろう。12歳の少女の空想日記なんかあてにする方がどうかしているのだ。

 

だけど・・・せめて彼の名前だけは知りたかったのに・・・ショボーン

 

追憶を振り切りともかく砂漠からの脱出を目指して歩き出す。

今は行動が必要な時だった。

 

砂漠はとてもやっかいなところだ。昼間は暑く、夜は零度にもなる時期もある。

 

水も食料もない状況で立ち往生するわけにはいかない。

 

陰り始めた天を仰ぎ、太陽を見ながら滝のように流れる汗をハンカチで拭いながら進んでいた時のことだ。

 

まさに奇跡のようなできごとが起きたのは。

前方に土ぼこりが見え、明らかにラクダに騎乗した人物が単騎駆けているのが見えた。

 

これぞまさに天の助けだわ!!

 

咄嗟の判断で私は持ち歩いていた手鏡をポーチから出して太陽光を反射させてみた。

 

すると先方も気づいたらしくこちらへとまっすぐに向かってきてくれた。

 

こんな砂漠で誰かと出会えるなんて幸運だけど

・・盗賊とかじゃありませんように・・