和やかな雰囲気で歓談していたらふと思いついたようにリネットさんが言った。
「そうですね・・ざっと条件をお伺いしましたが実はぜひご紹介させていただきたい方がいますが、どうされます?」
ええ?そんなに急に?
正直心の準備なんか全然できなかったけど隣に同席していた姉に肘でつつかれてしまった。
「あのお相手はどんな方なんです?」
恐る恐る確かめるとリネットさんは一瞬言いよどんだ風だったけど、すぐに笑顔で答えてくれた。
「貴女もご存じかもしれませんが俳優のラウル・アコニットさんですわ。彼は俳優として演技の勉強のためわが社に登録いただいたのですが、もちろん結婚の予定はありませんし神話にも詳しいので貴女とも合うのではないかと・・」
リネットさんがそう言った瞬間隣りで姉が黄色い悲鳴をあげた。
そういえば彼のファンだったかしら?私だって名前くらいは知っていたけどあまり彼の出演作は見たことはなかった
・・前に「シャナーサの休日」という作品を見たことがあるくらいだった。
それに事情通の姉の話では、ラウルさんはいわゆる「パラサイト5」と言われるブラックリスト入りしたいわくつきの会員らしい。
だけど実のところ私だって「メモリーズパラサイト」だったからラウルさんのことはとやかく言えなかった。
私にとって元来セピア色のはずの思い出は今もって色鮮やかで心躍るものだった。
なぜなら私の愛する方は追憶の彼方にしかいないのだから
・・・重症だった。