日課の夜の散策に行かれたのだろう。

もしかすると私と同じで緊張されているのかもしれない。

 

妻を娶るのはライザール様も初めてのことだから。

 

誘ってくださればいいのに、と思わなくもないけどやっぱりこんな夜だから大人しく彼の帰りを待っていよう・・・

 

主のいない夜の帳がおりた室内は静まり返っていた。

 

月明かりが室内を淡く照らしていて幻想的な雰囲気が満ちていた。

 

もうすぐここにライザール様が現れてこの寝台で抱かれるのだと思うと緊張はあるのに、一方でこの場所に妻として迎え入れてもらえた安堵感もあった。

 

長いこと独身だっただけにライザール様はどこか頑ななところもあったけど、触れ合ううちに気づいたら心を許してくれていた。

 

そうやって少しずつお互いに歩み寄り、打ち解け合うことができた。

 

これから長い人生を共に歩むと決めた以上、時間をかけてこれからも絆を深めていけばいい。

 

そんな風に自然と思えるような相手と出会えたことは幸いだ。

 

寝台に腰を下ろしてライザール様のことを想いながら心待ちにしていたら、やがて開いた窓から一匹の黒豹が音もなく入って来た。

 

お行儀よく水場で足を濯ぎ足ふきマットを使う礼儀正しさが微笑ましい。

 

月明かりはあっても室内の明かりは絞られていたから暗闇と同化した獣はまるで影を切り取ったかのように姿を現したかに見えた。

 

爛々と輝く琥珀色の双眸はライザール様の瞳と同じものだった。