身分のない私がライザール様に捧げることができるのはこの身と想いだけだから彼の為を思えばもっと距離を取った方が良かったのかもしれない。

 

そんなことを思っていたら珍しく店主様が顔を出された。

 

「シリーン・・・?よかった、いたね。ライザール様がいらっしゃったんだけどお通ししても大丈夫かい?」

 

――ええ!?

 

そういえば以前会った時にオフのことを話したかも・・先触れもなくお見えになるなんて思わなかったけどそれでも嬉しかった。

 

慌てて手近な雑誌の中に写真を挟んでラックへと押し込み体裁を整える。

 

「ええ、大丈夫ですわ店主様」

 

返事をすると店主様がにこりと頷かれた後、私の手に紙袋を手渡した。

 

「必要だと思ってね、そろそろないだろう?」

 

ライザール様を気にされてか店主様はそうとしかおっしゃらなかったけどすぐに察しがついた。

 

私が服用している避妊薬は店主様がご用意してくださっていたものだった。

 

突然ライザール様が来られたから万が一に備えて気を使ってくださったのだろう。

 

店主様を安心させたくて受け取ってはみたものの、内心不可解なほど動揺していた。

 

だってもうそれは必要ないものに思えたから・・そうとしか言いようがない。

 

だけど店主様に告げる必要は感じなかったから笑顔を返す。

 

店主様からいただいた袋は捨てるか引き出しの中にしまうかどうか悩んだ末引き出しの奥に押し込んだ。

 

私が避妊薬を服用していることをライザール様はご存じだったけど、それでも知られたくなかったのだ。