「なんだ・・まさかキスは初めてか?」

 

私の初心な反応が意外だったのかライザール様は瞠目される。

 

ええ!そうよ!憎らしい方!

 

理想のキスとは程遠かったけど私の心はこんなにも掻き乱されてしまう。

 

それは・・貴方がくれた初めてのキスだからよ、ライザール様・・

 

だからもう少しだけ・・わけてちょうだい・・

 

「・・・・・んんっ・・」

 

ライザール様の頬に手を添えたまま今度は私からキスを返すと、一瞬の躊躇いの後彼は応えてくれた。

 

月明かりの影の中で抱擁を交わした後、ゆっくりと身を離した。

 

思わずすがりついた彼の胸は高鳴っていなくて・・落胆を感じたけど後悔はなかった。

 

彼にとってはこれまでかわしたキスの一つに過ぎないのだとしても・・

 

「言っておくが謝らないぞ。お前は私の婚約者なのだからな」

 

言葉とは裏腹にライザール様の顔には複雑な心情が見て取れた。

 

恐らく彼は私が初めてだと思っていなかったのだろう。