だけど・・それは心を見せまいとするライザール様も同じなのではないだろうか?

 

彼が本音を見せる相手がいるのかはわからないが、なんだか彼を見ていたら全てを諦めて割り切り求められる姿を演じているように思えてならなかった。

 

かくいう私自身が成りすましている「レイラ」も彼の権力に群がる一人だった。

 

そんな私にライザール様が訝しむような眼差しを向けるのはやはりしかたのないことなのだろうか。

 

正体を知られたら困るのに私自身を見て欲しいという矛盾を抱えたまま私はライザール様の側に侍べる。

 

「時に・・先ほどの男は知り合いか?」

 

葡萄を食べ終わった後、ふと思い出したようにライザール様が尋ねられた。

 

だけど本当はいつ切り出すかタイミングを見計らっていたのだろう。

 

思わずドキリとしてしまう。確かに知ってはいたが思い出せないような相手のことをライザール様に勘繰られてしまうなんて・・

 

それにライザール様に嘘をつく度良心が咎めてしまう。

 

だけど私は僅かな躊躇いを抑え込み「いいえ」とだけ応えた。

いかに否定しようともなかったことにはできないのだとしても・・

私があの男としたことを彼には知られたくなかった。

 

「そうか・・・ならばいい」

 

追及されるかもと危ぶんでいたが、ライザール様はただそう言われた。

 

私の話を信じてくださるのだろうか?いえ、それとも全て信じておられないからこそ私の返答は関係ないのかもしれない。

 

だけどライザール様の思惑はどうあれ、気持ちはもやもやしたままだった。

 

あとどれくらいこんな想いをすることになるのだろう?そう思えば気が滅入ってしまう。