「素敵なお部屋ですね」

 

随所に寛げるようなこだわりを感じる。なかなか趣味の良い部屋だった。

 

「ああ、私もこの部屋は気に入っている。だが忙しくてあんまり寛ぐ時間が取れなくてな、せいぜい寝に帰ってくるくらいだ」

 

まあ!もったいない。

 

「ごめんなさい、そうとは知らず突然お邪魔してしまって・・」

 

思わず恐縮してしまう。だがライザール様は機嫌よく「構わない」と言った。

 

「ではさっそく本を選ばせていただきますね・・」

 

こちらからねだった以上、彼の貴重な睡眠時間をこれ以上削らないためにも用はさっさと済ませた方がよさそうだ。

 

気を取り直して書庫へと行き、ざっと見渡してみたがかなり貴重な本が揃っていた。

 

おそらく稀覯本と呼ばれるような書物や文献まであるようだった。

古文書や暗号解読は得意だったけど、今は「婚約者」だから心惹かれながらも無難に流行作家の読本を選びとった。

 

貴婦人が読むような本がライザール様の書棚にあるのも不思議だったけれど、女性達と話す機会も多そうな方だけに一種の話題作りのためだろう。

 

選んだ本を持ち、ソファで寛ぐライザール様の元へ戻ると隣に座る様に手で示された。

 

迷うことなく進められるままソファに座ると、ライザール様は私が手にした本をちらりと見て言った。

 

「お前はもっと違う本を好むと思ったが、まあいい。その本は返さなくていい、よければもらってくれ」

 

見すかしたようなライザール様の言葉に冷やりとしながらも、ありがたく本はちょうだいする。

 

若い娘が好んで読むような本はきっとあの書棚には合わないから。