※ライザール視点です
愚鈍な女だと評判の娘が美女で気品があり、知性もあるなど出来すぎだ。
正体は恐らく密偵・・・少なくともアリ家の侍女などではないだろう。
王を謀るなど不快でしかなかったが、怒りを露わにする機会は失してしまった。彼女が髪をかき上げた瞬間、私は彼女の虜になっていたからだ。
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甘く蠱惑的な香りが彼女の全身から漂っていた。
それは私の本能を刺激して絡めとるものだった。
いうなれば求愛フェロモンとでもいうものだろうか。
こんな魅惑的な女に出会ったのは生まれて初めてだった。
まさにオスの性で彼女に逆らうことなどできなかったのだ。
半獣である私の秘密をこの宮殿に集う者達は皆知るところではあったが、それでも世継ぎを作るために結婚を余儀なくされてしまった。
人とつがったところで生まれてくるのはただの人だけに、私の血を受け継ぐことができる世継ぎを望む私の思惑は一切加味されなかった。
過去にもあったことだが隔世遺伝することで細々と血脈を繋いできた。一時は同族の女を保護して種を増やす計画もあったが、人道にもとる行いを祖父も父もけっして受け入れなかった。
存外私の一族の男達はロマンスを信じる質なのだ。必ず、運命の出会いがあると信じる、それが我が父の教えだった。
だからその時を待ち望んだが、しびれを切らせた家臣に見合いを勧められてしまった以上、王として応えざるをえなかった。
いかに不満でも同族の女がいない以上我慢するしかない。
だがそれはどうやら「レイラ」も同じだったらしい。
私のことを父親から聞き及び恐れをなしたに違いない。
ただの人の女にとって獣に変化する男など忌むべきものでしかないのだろう。
だからこそこの女が身代わりとしてここに来たが、今となってはかえって良かったといえた。