どうして?なぜ貴方は追及なさらないの?
まさか・・やはり気づいてるのだろうか?
正直に尋ねたら彼は案外あっさりと打ち明けてくれる気もしたけど、気味悪がられて恐れられ疎まれたらと思えば舌が凍り付いてしまったように言葉を紡げない。
そんな私の緊張を察したのかライザール様は話題を変えられた。
「それより・・今日は王子達と狩りだ・・お前にも同伴して欲しい」
できれば狩りなんて遠慮したかったけど、友好国との交流会も兼ねているから国内外問わずにアピールする目的もあるから断ることはできそうになかった。
だって私は偽りとはいえ「婚約者」ですもの。
だから笑顔で頷くとライザール様が嘆息された。
「なんだ・・気が進まないか?だがこれも王妃になる者の務めだ。覚悟を決めることだ」
私の微妙な気分の変化を読むのが本当に上手い方だ。
けれどそれより、「王妃になる者」と牽制されたことが堪えた。
これは仕事だから必要に応じて臨機応変に対処できるけど・・
妻になることなどできない私に対して王妃になる者への覚悟を問うなんて・・
ならば覚悟を決めれば貴方は私を選んでくださるの?
そう尋ねたい衝動にかられながらも、問うことはできない。
追及をせずに曖昧なまま、この状況を維持しているのは私だろうか、それとも彼?
たぶん私達は互いに真実を避けている・・そう思えてならなかった。