これで一件落着なはずなんだけど・・なにか忘れているような?

 

そう思った時だった。

 

そろーりと退散しようとしたジェミルの首根っこをライザール様がケガをしてない方の手で掴み上げた。

 

「待て、逃がさんぞ小僧。それで?お前は誰だ」

 

むかっむかっむかっ

 

「小僧」とか「ガキ」とかライザール様が言われる度にジェミルの額に青筋が増えてゆく。本当にわかりやすい子だわ。もっとポーカーフェイスを学ばないと。

 

「あ?べっつに~俺はただの使用人だっての。弓持ってふらついてるあいつを見かけたからヤバい奴だと思ってとっつかまえただけ」

 

口の悪いジェミルにヒヤヒヤしながらも、そのおかげで助かったのは確かだからここはひとつとりなした方がいいかもしれない。

 

「おかげで大ごとにならずにすんでよかったですわ。ね?ライザール様あせる

 

「なるほど・・使用人の鑑だな、感心なことだ。褒めてやりたいところだが・・その姿はなんだ?明らかに胡散臭いぞ」

 

そうよね、やっぱり汗ガーン

 

ジェミルは顔を覆うベールをして夜陰に馴染みやすいマントを羽織っていた。明らかにただの使用人ではないわね。どちらかというとアサシンっぽく見える。形から入る子だから許してあげて、そういう年頃なの。

 

だけどそうは言っても同僚だしジェミルの正体がバレたら私だって危うい。

 

どうしたものかと思っていたらジェミルが言った。

 

「今の時間は勤務外でプライベートだし服装は自由だろ?だっせー服着たくねええー

 

おしゃれには気を遣うジェミルらしい言い分だったけど苦し紛れにもほどがあった。

 

しばしの間私とジェミルの様子を窺っていたライザール様だけど、やがて嘆息したかと思うとしぶしぶといった様子で言われた。

 

「まあいい。今夜のお前の働きと我が婚約者に免じて不問に処す。ボーナスははずんでやろう。だからもうさっさと下がれ」

 

むかっちっ・・そりゃどーも。じゃーな」

 

―舌打ち!?ああ・・頭痛いガーン

 

ライザール様の言葉にジェミルはこちらを気にかけながらも退出した。