あの場でいきなり押し倒したりせずに、きちんと場を改める大人の余裕が素敵だった。

 

ドキドキ

 

そりゃあ私だって女なんだし期待だってしちゃうわ。

ライザール様とデートだけでももちろん素敵で嬉しいけど・・

 

プロポーズされないかしら・・なんてつい考えてしまう。

私みたいな密偵の女に本気になるはずないわって疑ってしまう気持ちがないわけじゃないの。

 

でも恋したら臆病になってしまうのだとしても人生で一度くらい本気になったっていいじゃない?

 

そのくらいの夢を見たって許されるでしょ?

だから緊張もあったけど私は弾む気持ちのまま回廊を通って中庭へと向かった。

 

身を乗り出して中庭の様子を窺いながら夜の匂いを嗅ぐ。

 

満月

 

先ほどあんなことがあったとは思えないほど中庭はいつも通りだった。

 

緊張もなく、鳥の鳴き声や虫の集く音がそこかしこでしていることに安堵する。

 

ライザール様どこ?

 

なにせ中庭と言ってもなかなか広いため、2階からでも確認できなかった。

 

だがしばらく行くと、人影が見えた。

 

――いたわ、ライザール様

 

彼はドラセナの木の前で私を待ってくれていた。

 

「ライザール様」

 

だから思わず名を呼んでみたら彼が私を見て微笑んでくれた。

 

「待っていたぞ、今宵は一段と艶やかだな。見惚れたぞ・・」

 

ドキドキ

 

よかった、喜んでくださったわ

 

彼が差し伸べた手を取ると、私の手の甲に恭しくキスをくれた。

 

ドキドキ

 

その親密な仕草に胸が躍る。