この日を境に私は八大龍王とその眷属だけが棲まう異界へと還り龍神としての役割を本能の赴くまま果たすだけの存在になったはずだった。

 

だけど心残りがあって、そして断ち切れなかった絆があるからだろうか、龍神の姿になってもまだ私の意識は消えずに長政さんはずっと私にとって特別な人だった。

 

戻ってくる時に佐和山城の庭池にいた小さな私の弟も光の結界で包み込み一緒に連れて来た。

 

そして共に私が去った後の地上で起こったさまざまな出来事を見守る。

 

全ての人の営み、過去現在未来それらが全て手に取る様にわかった。

 

 

私の正体を知っていて黙っていた三鶴さんに対し驚愕の事実を知り動揺してしまった長政さんが胸ぐらをつかむ緊迫の瞬間はあったけど、長政さんは弟を失い傷ついてる三鶴さんを責めることはできずに、振り上げたこぶしを歯を食いしばり収めてくれた。

 

突然神子を思わぬ形で失った八葉のみんなは困惑していたけど、

こんな時だからこそ絆が大事だと幸村さんがみんなを説き伏せてくれたこともあり「五月兄さん」はあちらの風習に従い荼毘に付され八葉が揃って見送った。

 

兄さんの魂は青龍が輪廻の輪の中に送ったとはいえ、骸を残せば怨霊に穢されてしまうから・・・

 

折しも菊の頃・・みんなが備えてくれた献花も白菊だった。

 

それから三鶴さんは三成として生きて来た20年のけじめをつけるために幸村さんと兼続さんを説得して協力を仰ぎ、天下分け目の戦が起きないように八葉として家康殿に申し開きをしたのだった。

 

戦わずにこう頭し、自らの首すら差し出すと身を投げ打った殊勝な三成さんの潔い態度は家康殿を寛容な心持にしたようだ。

 

上洛を拒んでいた上杉家に兼続さんと共に働きかけ、親子で決裂しかけた幸村さん一家も離散をまぬがれたことにも一役買ったことも評価された。

 

八葉の誼で家康殿の腹心でもある宗矩さんや武断派の長政さんまでもが八葉としての三鶴さんのために執り成してくれた。