命がけで愛する人を守るためにこの場所に戻って来たのに!

 

なんでこんなことになってしまったんだろう・・・!

 

兄さんの死は私の心にけして消えない傷をつけてしまった。

 

――もう嫌だ・・こんなのは嫌・・・

 

悲しみに沈みむせび泣くことしかできない私に声をかけたのは長政さんだった。

 

「七緒、遅くなってすまない。五月殿のことは本当に残念だった。

お前の兄だというのもあるが俺はあの男には一目置いていた」

 

――長政さん!

 

「どうしてこんなことに・・・私は神子なのに・・なにもできませんでした」

 

目の前の惨事を食い止めることもできなかった無力感が私を苦しめる。

 

いくら嘆こうとももはや五月兄さんは戻ってこないのだ・・

 

「・・・・」

 

長政さんの力強い腕が私を抱き寄せたけど、彼は慰めは口にはしなかった。

 

どんな言葉でも今の私には届かない・・それほど深い喪失だった。

 

兄さんとは血の繋がりこそなかったけど私にとって大切な「家族」だった。

 

神子に選ばれて八葉に選ばれたことで私達は出会いそして傷ついてしまった。

 

こんな結末を迎えることになるなんて思ってもみなかった。

容易く命が奪われてしまう世界なのだと改めて思い知る。

 

同じ喪失を抱えた長政さんの腕の中で私はまた幼子のように泣きじゃくる。

 

そんな私をただ黙って長政さんは抱きしめてくれた。