「三鶴兄・・・さん・・・?」

 

 

五月兄さんは虫の息だったけどまだ生きていた。慌ててもつれる足で駆け寄り覗き込む。

 

――兄さん!

 

「五月、悪かった。すべて私のせいだ・・悔やんでも悔やみきれない。これまでだって修羅場をくぐってきたつもりだったが、あちらで平和に暮らしてるはずのお前がまさかこんなことになるなんて・・

お前は私の実の弟だ・・こんなことで失うのは嫌だ」

 

三鶴さんに抱き留められた兄さんの痛々しい姿はまるでピエタみたいだった。

 

血の気が引き瀕死の五月兄さんに涙声の三鶴さんが話しかける。

 

彼はこの瞬間確かに五月兄さんのお兄さんの三鶴さんだった。

 

目の前で起きてることが現実味を欠いたまま無情に進む様子を私はただ見ていることしかできなかった。

 

・・・いかに無情でも個の人の営みに私は干渉できない。そんな風に考えてしまえるのはこれ以上傷つきたくない私の精神(心)が龍神よりになってしまったからだろうか

 

幾度も龍脈が穢され人々の絶望がもたらしたのは力不足の龍神と神子、

 

そして和を欠いた八葉・・すべてが起こるべくして起こったのかもしれない。

 

天下泰平をうたいながら戦乱は収まらず大地は血で穢され怨霊が跋扈する嘆きに満ちた世界の中では取るに足らない悲劇でしかなかった。