「気のせいだ。この通りな。よけいな詮索は無用に願おうか」
直江兼続は同じ白虎の八葉で大威徳明王呪の協力技を使えるくらいには絆はあったが、それも神子あってのものだった。
「てっきり俺は神子殿を引き留めると思ってたぜ。随分薄情なんだな」
嫌な絡み方をしてくる男だ。だが気づいたら兼続だけではなく皆が俺を見ていた。
「そうだよ、神子も本当はあんたに引き留めてほしかったんじゃないかい?」
――そんなことはわかっている!だが家を捨てられぬ俺にどうしろと!?
「勝手なことを言うな!そもそもそんな聞き分けのない女ならこちらからお断りだ。神子殿は己の身の程を知り元の世界に去った。それだけだ」
「そんな言い方あんまりです。神子様がお可哀そうですわ」
「・・・・・・・っ」
星の一族の姫が悔し気にうつむき姉が彼女を宥めるのを無言でやり過ごす。
七緒はあの平穏な世界で生きるべき女だった。これから先に起きる戦乱で幾度も傷つくことを思えばとてもこの世界に残り俺を選べなどということはできなかった。
没落した織田家のしがらみからも神子の役割からも解き放たれ
やっと安全な場所に戻れるのだ。それを止められるとでも?
俺にはそんな残酷なことできない。
光り輝く龍脈と時空の穴も神子とともに消え去ってしまった。
その喪失感は俺の心に痛みをもたらしたがこれが最良だったのだろう。
「なんていいぐさだい、まったく素直じゃないんだから。あんたの優しさ神子に伝わるといいけどね。あの娘、傷ついたんじゃないかい?」
――そうかもしれない。だが年頃の娘の傷心などいずれ時が癒すだろう。
あちらの世界には五月も大和もいる。神子を大事に思うあの者達がきっと彼女の心の支えになる。俺の出る幕はないさ。
俺が唯一愛した女が他の男を選ぶ、そんな悔しい想いをこの俺がすることになるとはな。
ああ・・確かに俺は重症らしい。