こうして私達は黒田邸を目指すことになったんだけど、周囲の空気がやたらと重い。風景から今が秋だってことはわかった。

 

それ以上の過去には遡ることはできなかったのはおそらく過去の自分がいる場所に降り立てば空間にひずみが生じて予測できない事態が発生してしまうからだと本能で悟る。

 

まだこちらでも2か月くらいしか経ってないというのに怨霊の気配が濃厚だった。

 

だけど今の私達は怨霊に構っている暇はなかった。

 

もし長政さんが亡くれば八葉が欠けてしまうことになる、それはなんとしても避けなければならなかった。

 

それに!長政さんを失いたくないよ!

 

「急ごう!!」

 

体力の限りダッシュで駆ける強行軍だったけどやがて馴染みのある黒田邸の建物が見えてきた。

 

いくら神子といっても突然訪ねて中に入れるものかと思っていたら、門が開き中から武蔵君が飛び出して来た。

 

見るとあやめちゃんと宗矩さん阿国さんの姿もあった。

 

長政さんは貴重な伝手を持つ徳川方の重鎮だからおそらく家康殿が宗矩さんを寄越したのだろう。

 

一方の黒田家の方々も主君である長政さんが支持する家康殿の腹心を密偵と知りながらも無下にできなかったに違いない。

 

見切り発車で来ただけにとりあえず味方の八葉と合流できたのは幸先良かった。

 

慌ただしい訪問だったにも関わらずあっさりと屋敷の中に招き入れられる。

 

それほど一刻を争う事態なのだろう。