私にあるのはライザール様に対する愛だけだもの。

 

もし両想いになれて求婚を受け入れるならば私は踊り子でも密偵でもいられなくなってしまうけれど

 

彼と人生を共にできるのであればそれでも構わないって思えてしまう自分がいた。

 

それでも葛藤があるのは、これまでやりがいを感じていた仕事を失うことになってしまうこともだけど、やっぱりしがらみがあるからだと思う。

 

私は一人で生きて来たわけじゃない・・

御恩のある店主様になんの断りもなく、勝手はできないでしょう?

 

それとも私の代わりなんていくらでもいるんだって思えば気が楽かしら?

 

いえ、それはそれで複雑だわ。

 

私にだって踊り子として、そして密偵としての自負があるもの・・

 

女としてライザール様に心底惚れていても譲れないプライドだった。

 

とはいえ、もし王妃になれたならそれはそれで大変な役回りだわ。

 

カマルの舞妖妃になるまでの道のりより遥かに重要で過酷だろう。

 

ましてやなったらなったで地位を維持することは生半可なことではないのは容易に想像がついた。

 

どちらにせよ私の一存でどうにかなるものではなかった。

愛も覚悟も能力もあったとしてもそれだけではまだ足りない・・

 

あと一手が必要だった。社会的身分、いわば宮廷における後見人の存在が不可欠といえた。

 

そうはいっても心当たりなんかないわ・・どうしたら

 

もっともカマルは高級サロンなので大臣クラスの方達も出入りされているし、中には舞妖妃の熱狂的なファンの方達もいるけれど・・

 

今の私はレイラ様なんだし・・舞妖妃と正体がばれるのはまずいわね。

 

ここは我慢するしかないわ・・

 

そんなことを真剣に考える内に気づいたら眠りへと誘われていた。