ああ、どうか私だけを見つめて欲しい・・
そうすれば私の身も心も捧げるのに・・・
「そうか。お前はそう感じてくれるのだな、シリーン」
満更でもない様子で笑みを浮かべるライザール様の本心は伺えなかったが、その琥珀色の瞳に宿った情熱までは隠しようもなかった。
ああ・・愛しい方。貴方を嫌いになれそうもないわ・・
「離れ難くてならないが今宵はもう遅い・・部屋に戻るといい」
気持ちを吐露したせいか、ほんの少し心が軽くなった心地がしながら頷き返すと、
私の手を握り締めてた彼の手が名残惜し気にそっと離された。
「ええ、おやすみなさい・・ライザール様」
「ああ・・良い夢を‥シリーン」
挨拶を交わして穏やかな気持ちのまま部屋へと戻る。
寝台に横になりながら先ほどのやり取りを思い返した。
王侯貴族にとって政略結婚など当たり前のことでしかなかったが、それでもライザール様が野心にまみれた欲得ずくの結婚を選ぶことは受け入れ難かった。
貴方の心を愛で満たしてあげたい・・そんな風に思ってはダメでしょうか?
泉のごとく湧き出した想いは満ち溢れていたけれど、簡単に言葉にすることはできなかった。
これまで愛の告白などしたことはなかったし、こんな気持ちになるなんて思わなかった。
ライザール様は愛を尊び、愛を選びたいと願われたけど王であっても必ずしも叶うわけではない・・
王である以上臣下との関係は無視できないでしょうし、国民の支持にも関わる大問題だった。私だって店主様が許してくださるかはわからなかった。
恋愛感情だけでどうにかなるものでもないのだと改めて思い知ってしまう