互いに欲動を抑えるためには深夜の密会はやめた方がいいのかもしれない。

 

でも・・会いたい!

 

部屋に戻り夜着に着替える間も先ほどの余韻は消えることはなかった。

 

手鏡を覗き込みいつもより念入りに身だしなみを整えた後、意を決してドアをノックした。

 

コンコン

 

合鍵を使い鍵を開くと寝台に腰掛けたライザール様と視線が絡む。

 

「よく来たシリーン。先ほどはすまなかった。今夜は来ないかもしれないと思っていたが、お前の勇気には感服する。私を信じるがいい・・お前を傷つけたりはしない」

 

簡単に手に入る欲望より失う愛を恐れている・・そんな表情だわ。

 

「私は貴方を信じます、ライザール様」

 

迷いのない私の答えにライザール様は瞠目されたが、やがて静謐な笑みを浮かべられた。

 

こうして深夜の密会を重ねるたびに変化していく距離感は確実に私達の絆を深めていくものだった。

 

もしかするとシェラザードもこんな気持ちだったのかもしれないわね。

 

巡り合った機会を縁として大切に絆を育めば未来が変わるだろうか?

 

それはわからないけれど、芽生えた愛は今や蕾となりほころびかけていた。

 

寝台に腰掛け微笑みかけるとライザール様が私の手を取り、唇を押し当てた。

 

手首からふわりと香るヴァーベナはまさに甘酸っぱい恋の香だった。