料理が運ばれてきた。今夜のメーンはこんがり焼いたハームールのライス添えね。美味しそう。お肉が続いたからお魚も食べないと。

 

お料理をいただきながら話を続ける。

 

「ありがとうございます、ライザール様。あの砂時計は大切にしますね。猫足なところがとても気に入りました」

 

カルゥーを思い浮かべながらそう言ったら、ライザール様も屈託のない笑顔になる。

 

「お前ならばそう言うと思った。私も猫好きだからな・・大浴場のアレは私の発案でああなった」

 

ライザール様のお言葉で大浴場に置かれた湯が吹き出す豹の像を思い浮かべる。

 

―まあ、やっぱりそうだと思ったわ

 

「そうなんですね。・・ねえ、ライザール様、あの砂は砂漠のでしょう?」

 

さりげなく窺いながら尋ねたら、目を閉じふっと微笑まれた。

 

「ああ、そうだ。我らが砂漠と共に生きていることを忘れないためだ。砂漠の脅威の前では王も民もない。だが神秘の場所でもある・・個人的にも思い入れのある場所だからな。『貴重な宝石』に出会った・・昔のことだ。あの地が作り出したテロメアーナがこの国を豊かにしてくれた。」

 

 

ライザール様の言葉が胸に沁みる。王の言われた『貴重な宝石』とはテロメアーナのことかもしれないが、それでも確かに砂漠は幼い私にとって命の危機に瀕した場所でもあったけど、ルトとひと夏過ごした思い出の場所でもあった。

 

「ええ・・本当に、そう思いますわ」

 

あの場所でルトともに過ごせたからその後の私の生き方にも影響を与えたのだから。

 

感謝してもし足りなかった。

 

貴方のおかげで子供らしく屈託なく過ごせた最後の夏だったから・・けっして忘れないわ。