珍しく侍女に起こされる前に目を覚ますと、ふと視界に違和感を覚えた。

 

 

見るとサイドテーブルに寝る前には確かになかった砂時計が置かれていた。

 

両の掌の中に納まるほどの小さなものだったが、テロメアーナを加工したもので凝った意匠のものだった。猫足なのが可愛い。

 

綺麗・・・ライザール様が置かれたのかしら?もしかして私に・・?

 

宝石をふんだんにあしらってある砂時計はかなり高価なものだから、贈り主はライザール様に間違いないだろう。

 

砂時計だけに砂が入っていた。まるで小さな砂漠の流砂のようだ。

興味を惹かれ逆さにしてみるとサラサラと砂粒が流れ落ちた。

 

実用的なものというよりアートに近いもののようだ。

 

侍女が迎えに来るまで度々砂時計を逆さにして過ごす。

 

砂時計なんて意味深だわ・・

 

時は遡ることはできず、無情に進み続ける・・そんな当たり前のことを知らしめるためのもののように思えた。

 

――追憶ばかりの人生だった・・

 

ライザール様の言葉をふと思い出してしまう。

人生を振り返るばかりだったことを後悔しているということ?

それともこれは・・

 

そうね、ライザール様のお人柄からいって、恐らく前向きに人生を送りたいというメッセージなのではないかしら?

 

砂時計