「私は龍神の神子として父上の疑心暗鬼の鬼を切り捨ててさしあげましょう」
もちろん本当に切りつける気なんかなかったし、私に殺気がないのは父上にだってわかってるはず。
いわばこれは父上の怒気を抜くための儀礼的な作法だった。
「ふふ・・・ははは、刀を収めよ「なお姫」、女子がそのように血相を変えるでない。確かにそなたは私の娘だ。その気性の激しさ恐れ入ったわ」
「では黒田親子を赦免していただけますか?」
言質をとったところでどれほどの効果があるのかはわからないけど、やがて父上は頷いてくださった。
「わざわざその為に時を駆けるとは、そなたの一途さに免じて黒田親子の罪は許そう。同時に私をたばかろうとした半兵衛らも捨て置く。これでよかろう」
――よかった、なんとかなったかな?
交渉が成立したことに満足しながら父上を見返すと、やがて父上がぽつりと言った。
「・・・なお姫、私は天下を治めることはできなんだか?」
!!
先ほどのやりとりで際どいことも言ってしまったから、不穏なものを察したのかもしれない。
けれどそれだけは応えることはできなかった。
それにそろそろ私も戻らねばならない。ここらが潮時だった。
「シャン」と龍神様の鈴の音が鳴り響く・・まるで帰還を急かすように
「父上、どうかご健勝にお過ごしください。父上にお会いできてよかった、質問にはお答えできませんが代わりにその逆鱗は父上に差し上げます。どうか大切になさってください」
これまで肌身離さず持っていた甲斐あって龍神様の力が増したせいか、あと1度くらいは時空を超えることができるだろう。
いずれ本能寺の変が起きた暁には幼い「なお姫」には必要なものだからここに置いていこう。
――さようなら、父上!!
そう思った瞬間私の意識は遠のき、体が発光したかと思うと天守閣の窓から光の柱となり龍の姿に転変したままで一気に時空を駆けた。