「これは私が愛した方と分かち合った大切なお守りです。私はその方を救命するために遥かな時空を超えてここに来ました。」

 

恋する乙女の気持ちを厳格な父上がわかってくれるかはわからないけれど、他の姉妹達は皆嫁がせたのに同じ気性を持つ私だけは最期まで父上は側に置いてくださった。

 

「・・・ほう。続けよ」

 

「その相手とは今宵父上の手の者により命を落としかけた者です。そう言えばもうおわかりでしょう?」

 

あえて名前は出さずに父上を見据えると父上は一瞬で怒気を孕んだ。

 

アンガーマネジメントができていればもっと長生きなさったかも・・

 

「ならん!奴は私を裏切った逆賊の子せがれだ!!」

 

しかし私はあくまでも冷静に畳みかける。

 

「すでに首級はあがなったはずです。彼だってかけがえのない命だった。どうかそれに免じてお収めください父上、怨霊を解き放つなど天道にももとる行いをする父上は間違ってます。」

 

遊び相手だった少年を身代わりにされた長政さんの胸中を思えば辛かった。

 

それに長政さんの為に命を散らした名もなき少年を思えばなんとしてもその犠牲に報いなければ。

 

「どうか!どうか父上!黒田官兵衛殿を信頼なさってください。彼はけっして父上を裏切ってません!敵地に囚われておりますが、父上を裏切ったわけではないのです!!むしろ父上は彼の忠義に報いなければ!!」

 

怒り心頭の様子だったが徐々に父上は落ち着きを取り戻しつつあった。

 

「なりません!殿!!裏切り者を許しては武士の名折れとなりましょう!末代までの恥になりますれば」

 

小姓が負けじと父上に言い募る。しかし彼は父上の一喝で黙りこんだ。