初めてだからどうすればいいのかわからなくてしがみつくことしかできなかったけど、長政さんの本気を感じ取って怖くなってしまった。
キスから先なんて無理だよ・・・
私にはまだ神子の務めだってあるしそんな覚悟だってない。
だけど考えすぎだったみたい。やがて唇が離れて私はあっさりと解放された。
頬を上気させたまま恐る恐る見上げたら長政さんはすでにいつも通りだった。
「今夜はここまでだ、神子殿。俺もつい興が乗りすぎたようだ。だが後悔はないし謝るつもりもない」
それはいつもの戯れにも思えたけれど、取り繕わないでいてくれたことが嬉しかった。嫁入りの前の娘がキスなんて織田家の姫としてははしたなかったかもしれないけど、この世界に属しながらも良識にとらわれない私を神子に選定した龍神様は許してくださると思う。
「私だって後悔はありませんから」
断言すると長政さんはフ、と微笑んだ。
「そうか、それは良かった。さあもう今宵は遅い明日も早いしそろそろ戻ったほうがいい」
満更でもない様子で促す長政さんと離れ難いものがあったけど、今夜はもう十分困らせてしまった。
それにキスの直後だしまだ恥ずかしい。
大人の長政さんはすでにいつもどおりみたいだけど私はまだ当分キスの余韻に浸っていたかったからここは大人しく引き下がることにした。
「はい、おやすみなさい長政さん」
そうはいっても今夜は眠れないかも・・![]()
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後ろ髪をひかれる思いで彼を庭に残したままその場を後にする。
これからの未来八葉でなくなった長政さんが私を選んでくれる日が来るかはわからない。
それでも私は・・
――長政さんと共に生きたい!!
神子である私の心からの願いに応えるようにまた鈴の音が「シャン」と鳴り響いた。
この夜確かに私と長政さんの運命は交叉したといえたかもしれない。
だけど実のところその縁はずっと以前に芽生えていたものだった。