解散してからも興奮は冷めないままだったけど気づいたら自然と長政さんの姿を探していた。

 

――いた、長政さん

 

私達元の世界組は遠慮したけど、長政さんはみんなと一緒に振舞われた祝い酒を飲んでいたみたいだし酔いを醒ましているみたいだった。

 

夜陰の中月明かりに浮かび上がるその横顔はとても精悍な美が際立っていた。

 

思わず見惚れていたら、長政さんがフと笑う気配がして振り向きざま言った。

 

「俺にのぼせるなと言ったはずだが?」

 

 

そんなこと言われたっけ?さっきは夢うつつだったからあんまり自信がない。

 

自信家らしい長政さんは「俺にのぼせるな」って言うけど・・・

 

「のぼせたらダメですか?私はもっと長政さんとお話ししたいんですけど」

 

二人きりになれるチャンスは限られているし、今更だけど長政さんが気になってしかたなかった。だからダメだといわれたら困ってしまう。

 

「やれやれ言い出したらきかない娘だ。なんだ俺と話がしたいだけか?他のことはどうだ、神子殿」

 

 

他のことって・・それはつまり・・そういうことだよね。

 

だけど八葉である長政さんを神子の役割を超えて異性として意識するならばいずれそうなる可能性だってあるってことだったと今更ながら実感してしまう。

 

「お前は男を知らないな。だからそんなに無防備に夜更けに男の元に来れるのだろうが。いいか神子殿・・俺を八葉として利用するのは構わない。だが男として慕うならばそれ相応の覚悟をすることだ。我々は立場が違いすぎるし俺の肩には黒田家の命運がかかっている。わかるか神子殿」

 

 

それは阿国さんにも心配されたことだった。

こちらの世界では出自が大きく命運をわけてしまう。成り行きで織田の姫として名乗りを上げることになってしまったとはいえ、秀信にだって家族としての情があり私の一存で勝手なことはできなかった。ただでさえ城主として懊悩が多い秀信に迷惑をかけたくない。

 

それに未来はまだ定まっていないとはいえ私を選ぶことで長政さんの運命だって相応の影響をうけるかもしれない。